相撲道


天長10年(833年)5月 仁明天皇が相撲節会は単に娯楽、遊戯の為だけでなく武力の鍛錬が中心目的であると勅命を下されました。すなわち相撲は武道のひとつと言う事になります。

日本の文化、武芸には道の付く物が多く有ります。
華道、茶道、弓道、柔道、剣道、空手道、
人が他人を思いやる道:人道と言う物もあります。
道と呼ばれる為には深い精神性と規律が備わっている必要が有ります。
華道を例にとりますと素材の花の魅力をいかに生かし切るか。
いかに規律を大事にして正しく仕上げるか等が問われます。

相撲の場合、礼に始まり礼に終わると言われます。
相撲道の美徳を表した言葉に思います。

物事の真髄を追求する人を求道者と呼びます。
ここでは相撲道の真髄を追求する人を観てみます。
求道者・双葉山関の場合現役中からその実績を評価され、二枚鑑札(力士用と年寄用との二枚の鑑札)同様の形で現役力士のまま弟子の育成を許され昭和16年に立浪部屋から独立して福岡県太宰府市に「双葉山相撲道場」を開いた、引退後に年寄・時津風を襲名して道場名を時津風部屋に改称した。道場とは一般的には柔道場、弓道場、剣道場、空手道場等が思い浮かびますが
「双葉山相撲道場」と命名した処に双葉山関の相撲に対する深い精神性が感じ取れます。

双葉山関の語録に「相撲は体で覚えて心で悟れ」

相撲道に精進し、負けた時に、まだ、木鶏のような状態になれていない、と言う気持ちを表して言った言葉で「われ未だ木鶏たりえず」が有ります
木鶏(もっけい)とは、道家の思想家荘子の言葉で、闘鶏において
木彫りの鶏のように闘う前にどの様な相手を前にしても全く動じない鶏に例えたもので
双葉山関は陽明学者であり政治学、哲学者の安岡正篤氏より相撲は
単なる勝ち負けでなく心を鍛錬し、天にいたる道だいう考えを
「木鶏」の話にたとえて聞き、自らの相撲道を励んだという。
闘鶏で本当に強い鶏というのはまるで木の鶏のように相手の動きに動かされたり
惑わされることがない。泰然自若と構えている。
相撲の場合いつでも立ち会う事が出来る態勢に入っている事の例えにも取れます。

昭和14年69連勝をしていた双葉山関が安藝ノ海関に破れた時、恩師・安岡正篤氏に「われ未だ木鶏たりえず」と伝えたと言われています。

相撲は心、技、体の充実一体化が求められます。
心を鍛錬する手段に座禅が有ります。
座禅をして、今まで有ると思っていた心というのは
本当はどこにも無いものと悟り、しかし事に遭って自然と沸いて来る
、そこで沸いてきた心に執着し無い。
すなわち無心になる鍛錬をするのが一番の早道であると思えます。
心を無にすると相手の微妙な動きが見えてくる。
あの手で行こうこの手で行こうと策を練って土俵に上がっても立ち会う時には
無心になる方がよい。あれこれと執着心があると一瞬の相手の変化を見失い
予定の逆の結果になります。

同じ求道者に昭和44年45連勝を記録した大鵬関を外せません。大鵬関は二所ノ関親方の徹底的指導によって鍛え上げられた
、その指導内容は四股500回、鉄砲2000回、瀧見山延雄によるによる激しいぶつかり
稽古という激しいものだったそうだ。

大鵬関も座禅を体験しています。後年一門の西岩親方(大文字)が言った言葉が
記憶に残って居ります。”大鵬関に付き合わされて静岡の禅寺に行って参ったよ”
大横綱になった裏にはこの様な地道な努力が有ったという証明です。
現在も大鵬部屋を後継した大嶽部屋の正面玄関に「大嶽部屋」「大鵬道場」の2枚の看板が掲げられています。

禅を体得すると真剣勝負の際の助けになります。剣豪・宮本 武蔵も沢庵禅師に教えを請いています。不動心と言うのは心が石の様に固まり動かない事を言うのではなく
自在に動いても心が乱れない、ぐらぐらしない、すなわち不動であると解いています。
座禅をする時には心の中で無ー。無ー。と雑念を断じて行きます
やがて無と無の間隔が長くなり心の乱れが無くなり無心を経験する事が出来ます。
しかしこれで悟った訳ではなく読けて行く事が大事です。
雑念は雑草のごとく取っても取っても生えてきます。
これを毎日毎日根気良く抜き取る事が大事です。
禅僧の大事な仕事にこの雑草取りが含まれます。


初代・若乃花の故・二子山親方は次の様に発言されました。
力士の士は武士の士だ。”これは相撲も武士道だの意味に取れます。

力士が江戸時代に大名家に武士の身分で取り立てられることが有りました。本場所で好成績をあげた力士をお抱え力士にした。
武士には帯刀の権利が有りました。

現在でも武士の象徴である太刀を横綱に持たせ土俵入りを行っています。
露払い、太刀持ちを従え披露しています。



二子山親方の場合:理事長の時代土俵の充実を掲げ徹底してこれを実行しました。
待ったをした力士に罰金を課した事が有名です。 又 立会いの際仕切り線より前に手が付いていたり、手付き不十分の場合:相撲が進行していても取り直しをさせた。
この辺に二子山親方の相撲道を見る事が出来ます。


公益財団法人日本相撲協会寄付行為.第3条によれば この法人は、わが国固有の国技である相撲道を研究し、相撲の技術を練磨し、その指導普及を図るとともに、これに必要な施設を経営し、もって相撲道の維持発展と国民の心身の向上に寄与することを目的とする。と公表されています。



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